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2008年08月21日

2008年サッチモの旅 レポートAサッチモハウス博物館、そして“お宝”に満ちたアーカイブ お隣の名物おばさんも同行してサッチモ夫妻のお墓参りも 外山夫妻&セインツと行くサッチモの旅「ニューヨーク編」

サッチモハウス博物館、そして“お宝”に満ちたアーカイブ
お隣の名物おばさんも同行してサッチモ夫妻のお墓参りも
外山夫妻&セインツと行くサッチモの旅「ニューヨーク編」


ツアー一行15人は8月4日お昼前、ニューオリンズを発ち、サッチモを追ってメンフィス経由、ニューヨークへ飛んだ。NY…そこは“世界のサッチモ”を育て、サッチモがその偉大な生涯を閉じた“終焉の地”でもある。今、そこにいまも残されていたものは? 私たちは“サッチモの街”を訪ね、様々な人々とも出会い、新しい発見には胸をときめかせた。感動的なJAZZの旅はまだまだ続く!  (文と写真・小泉良夫)

まずは懐かしいスイングでNYの夜は始まるNY入りは午後7時前…といっても日差しが強く真っ昼間のよう。街はまだ午後の賑わいを見せている。ホテルにこもる時間ではない。我々のホテルは7番街55丁目の「ウエリントンホテル」。カーネギーホールのお隣さん。かつてこの周辺にはライブハウスが沢山あって、深夜、いや未明にもジャズマンの姿をあちこちで見かけたという。夕食をとったあとの午後9時過ぎ、「JAZZを聴きに行きましょう!」―外山夫妻の“提案”で広津さん、私と女房の5人は、ちょっとブロードウエイを下った46丁目の「エディソンホテル」へ。このホテルは以前、外山さんのJAZZツアーでも泊まったことがあるんですってね。この地階のクラブでは、1920年代から30年代初期にかけてのスイングジャズを聴かせている人気バンド「Vince Giordano & His Nighthawks Orchestra」がレギュラー出演中。
到着すると、すでに熱演が続いていた。懐かしいサウンドに目と耳をこらす。なんとベースはメタル。そのリーダーのトークに使われていたマイクが昔懐かしい丸形のどっしりとしたカーボンマイク!? 我々がステージ左、最前列の席に着くと、すぐ近くのリード楽器の奏者(各種サックスやらクラリネットやらいろいろ演奏)が目ざとく外山さんを見つけ、「さあ、一緒にやろう!」「いや、今は持ってきていないんだ」「おー、なんってこった」とかいったような会話?があって、外山さんはボーカル出演、「君微笑めば(When You’re Smiling)」を歌い、ウケましたねえ。
ゲスト出演していたクラリネット奏者のSol Yagedが「ほれ、わしはあの映画『ベニー・グッドマン物語』で、主役のスティーブ・アレンにいろいろとグッドマン・スタイルを指導してやった男だぞ、これを見てみろよ!」とか、コピー写真を我々に見せたりして…あ!サイン入りのCDを買わされちゃった。でも、これも懐かしさいっぱいの素敵な演奏だったなあ。



豪華な調度品に満たされたスイートホーム翌5日、NYメッツのホームグラウンド「シェイスタジアム」にも近いクイーンズ地区の「サッチモハウス博物館」へ向かう。ニューオリンズから帰っていた館長のコグスウェルさんらが出迎えてくれたが、コグスウェルさんはこの日、同球場でサッチモ功労者として表彰されるということで、ツアー一行に拍手で送り出されていく。変わって案内してくれたのは、アシスタント・ディレクターのDeslyn Dyerさん。サッチモが暮らした素晴らしいマイホームに招き入れていただく。手すりに沿って椅子つきのエレベータを備えた階段を上って2階へ。いきなり超豪華なバスルームを見せられる。蛇口など金属部分はすべて金というピッカピカ空間。ついでオープンリールのテープレコーダー2セット、(当時としては)最新式のオーディオ装置を備えた書斎。サッチモが一番好きだったというスペースで、親友トニー・ベネット自筆の肖像が飾られている。
未来のキッチンをイメージしたという空間にはガスレンジが5つ、冷蔵庫、流し、食器棚…壁からはペーパータオルやラップが飛び出すという仕掛けが面白い。ダブルの大きなベッドルームの壁には銀の壁紙がはられ、スピーカーが埋め込んである。豪華なシャンデリア、ダリの描いたキリスト像、聖書…信仰の深さもうかがわれる。そしてドレッシングルーム、ゲストルーム…どれも超豪華なのはむしろルシール夫人のお好みらしい。日本庭園を意識したという庭には芝生も敷き詰められ、サッチモはここでよくバースデイ・パーティーなどを開いていたそうだ。世界中を演奏旅行して回ったサッチモが心からくつろいだ“スイートホーム”に違いない。
1階の展示室には、サッチモの母マヤンとサッチモ、妹ママ・ルーシーの一家3人の記念写真を背景にした外山さん撮影のママ・ルーシー宅での貴重な彼女の写真が、まるで文化財のように丁重に飾られている。ちゃんと「photo by Yoshio Toyama」とある。外山さんのお写真集『聖地ニューオリンズ・聖者ルイ・アームストロング』にも載っているが、写真展を開いたり…いまや外山さんは立派な“写真家”でもありますねえ。
このサッチモハウス博物館の道を隔てた真ん前に総工費17億円という壮大な「ビジターズハウス」が2010年に建設される。クイーンズ大学の「サッチモ・アーカイブ」にあるすべての資料もここに移され、一般に公開もされることになっている。またみんなでやってきたいですねえ。
あちこちでガヤガヤやっていると、「あーら、あなた方が来ていたのォ!」とか、お隣の名物おばさん、セルマ・ヘラルドさんが外山夫妻の前に、にこやかな姿を見せる。彼女85歳! 1923年、生まれたときから(サッチモが引っ越してくる20年も前から!) ここに住んでいて、サッチモの自宅での日常はなーんでもご存じ。今は一人暮らしになってしまったそうだが、元気そのもので、「うちのお墓も、サッチモと同じところなんですよ」と、我々のバスに乗り込んで、みんなと一緒にサッチモのお墓参りで「Flushing Cemetery」へ。
お墓に花と演奏を添えてサッチモ夫妻を偲ぶ
墓地は深い緑に包まれてはいるものの、芝生に真夏の陽光が照り返す相変わらずの猛暑。記念碑のような立派なお墓を挟んで背丈ほどの植木と小さな星条旗が2本、色とりどりの花を植えた花壇、墓石の上には石で作られたトランペットがのせられている。サッチモとルシール夫人は、この墓石の前に並んで埋葬されていて、2つの墓誌が芝生に埋め込まれている。我々も二人に花を捧げる。セインツが「南部の夕暮れ」「聖者の行進」を奏でて慰霊する。セルマおばさんが、ベンチに腰掛けて静かに見守っている。どこか“絵になる”光景が出来上がる。
このあとの昼食には彼女を招待。で、そのあとまた彼女をお宅までお送りしなければ…「このままバスに乗っていたら、日本まで行ってしまうよ」と笑いを誘う。「この教会がサッチモのお葬式をあげた教会ですよ」などと、ガイドまでやってしまう彼女。別れるのが何とも名残惜しいセルマさんでした。
このあと、サッチモに関する貴重な資料がすべて保管されているクイーンズ大学の「サッチモ・アーカイブ」へ。プロジェクト・マネジャー、BaltsarBeckeldさんが説明役となり、次から次に垂涎の“お宝”が登場してくる。なかでも貴重なサッチモ愛用のトランペット4本が収められたトランクが開けられると、外山さんはこらえきれずに手に取らせてもらい、あ! 全部、吹き比べまでしてしまった。なかの1本を吹き終えると、「うーん、これはサッチモが来日した際、私が彼の楽屋で吹いてしまったものみたいだなあ」と感慨深げにつぶやく。ジミーさんが「この1本、買うとしたら、いくらぐらいになるのかなあ? 何億?」とか訪ねていたが、「値段は付けられません」…でしょうねえ。その昔、サッチモのトランペットを手に「おー、これはいいなあ」といった仲間のトランペッターに、サッチモは「…なら、あげるよ」なあんて、ポイと譲ってしまったという逸話が、披露された。「外山さんも、“これいいなあ、欲しいなあ”っていってみたら」とかで大笑い。
サッチモの意外な趣味が披露される。自分に関する新聞の切り抜きやら、招待状(ローマ法王からのものも!)、電報、ポストカード、ポスター、パンフレット、写真などを器用に切り貼りし、パーティの会話、練習風景、自作のレコードのダビング等の、懐かしいオープンリールのテープの箱に貼って作るコラージュ作品。アーカイブには800箱を超えるテープの箱のサッチモアートが残されている。大きな手でハサミをチョキチョキ、神妙にノリをペタペタ…それにちょっとコメントを加えたりして…出来上がった“作品”を掲げ、子供のように無邪気な笑顔で眺めているサッチモのユーモラスな姿が浮かび上がってきます。
サッチモの“宝物” の中には、島津貴子さん夫妻とのご対面、南里文夫さんとのラジオ・インタビュー、油井正一さんの著書「デキシーランド入門」(1963.4.24の日付)…世界を回った行く先々の記念品を大切にしまっていたのだ。
 
「バードランド」では“ニューヨークのため息” が…6日夕は、44丁目にある名門ライブハウス「バードランド」での外山さん夫妻のゲスト出演。レギュラー出演はデービッド・オズワルドと「ルイ・アームストロング100年記念バンド」。夫妻は1時間半、出ずっぱり! 恵子さんは終始バンジョー。途中から広津さん(cl)も加わってサッチモサウンドをたっぷりと聴かせ、喝采を浴びる。年代物の演奏だから、マイクは使わず、生のサウンドが耳に心地よく伝わる。
そんななかツアーに同行していた中村宏さん夫妻の誘いを受けてやってきたのが、なんと“ニューヨークのため息”として、そのハスキーボイスが一世を風靡したヘレン・メリルさん。80歳近いというのに美貌はまったく衰えず、優雅に微笑む。私なんかヤニ下がってツーショット! それに、ここにも“ご神体”ジョージ・アバキアンさんが来ていて、ヘレンさんとハグ! みんな、あちこちからタイムスリップしてやってきたみたいだなあ。
このあと、ここ「バードランド」では、ハンク・ジョーンズ(p)の90歳誕生日を祝う記念ライブが予定されていて、入り口はすでに予約客の長い列。聴きたかったけれど、本日はもうぐったり!
ジャズとサッチモにあふれたNYの夜は、こうして熱い帳(とばり)を降ろしていったのでした。
posted by saints at 23:37 | TrackBack(0) | ニューオリンズ訪問記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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